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第38話 先輩がいない日も、私たちはちゃんと動けます

last update publish date: 2026-10-24 21:12:41

木曜日の放課後、生徒会室へ入ると、御影先輩がいつも使っている席に、瀬名先輩が座っていた。

 別に指定席というわけではない。机にも椅子にも名前は書かれていないし、誰が座ったところで学校の備品は平等に人を支える。それなのに、私は扉を開けた姿勢のまま、ほんの少し動きを止めてしまった。

「お疲れさまです。……今日は、そこなんですね」

「こっちのほうが三人で画面を見やすいかなと思って。会長の椅子、座ったら急に字がきれいになったりしないか期待したんだけど、今のところ変化なし」

 瀬名先輩が持ち上げたメモには、勢いのよい文字が並んでいた。読めないほどではないものの、書いた本人も急いでいたことだけは、誰にでも伝わる。

 向かいで書類を揃えていた九条先輩が、顔を上げずに言った。

「ゆっくり書けばいいのよ。椅子に頼る前に、できることがあるでしょう」

「そういう地道な助言を、ここに座ってから二回ももらってる。怜央、毎日こんな気分なのかな」

「怜央くんは、メモの字については言われていないわ」
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